海外同胞の位置づけ、北南に相違/統一人文学世界フォーラムで
国籍ではなく血縁を重視
3年ぶりに対面形式が復活し、一部オンラインで開催された統一人文学世界フォーラム(3日、朝鮮大学校)の第1部では、2人の学者が北南の海外同胞法について多角的に分析した。双方の発表を通じて、それぞれの海外同胞法と政策の違いが浮かび上がった。

北南の海外同胞法について2人の学者が発表した
一貫した海外同胞政策
今年2月に朝鮮で採択された海外同胞権益擁護法について発表した朝大・政治経済学部の李泰一准教授はまず、朝鮮の海外同胞政策について解説した。
李准教授は、一般的に諸外国における海外同胞政策は本国の国益から規定されてきたとしたうえで、冷戦終結後に海外同胞法を制定した旧共産圏の国々の事例を挙げながら、本国の経済が豊かになれば出入国管理法を緩和し、海外同胞を優待するなどの特徴に言及。他国では労働力誘致、資本誘致をメインに海外同胞政策が法令化されたが、朝鮮は、一貫した海外同胞重視政策に基づいて海外同胞法を制定したと強調した。
また、朝鮮の海外同胞政策の本質は、海外同胞問題を完全に解決しようとする政策であり、そのためには民族的自主性を完全に実現しなければならないとしながら、これは、海外同胞たちを外国の少数民族ではなく、朝鮮の海外公民として見る論理をベースにしていると指摘した。
李准教授は、1972年に朝鮮の社会主義憲法が制定された際、憲法の条文に海外同胞の合法的な権利と利益を擁護する内容を明記した点など、朝鮮がこれまでとってきた海外同胞政策の具体例を紹介したうえで、海外同胞権益擁護法の制定は、朝鮮政府の一貫した海外同胞政策の結実で、法令化だと強調した。

海外同胞権益擁護法について発表する李泰一准教授
特に、同法第2条は、海外同胞の範囲を国籍ではなく血縁を重視し、広範に定めたため、海外同胞が発生した歴史的な経緯や現在の海外同胞の実状に合う合理的で実践性が伴った内容だと言及した。
また、同法第8条は、海外同胞の権益擁護と関連して、本法で規制しない事項は既存の該当法規に従うとし、朝鮮と他国の間で結んだ協定において本法と異なった事項が定められる場合はそれに従うと明確に規定したため、これまでに東欧諸国で海外同胞法が制定された際に起こった本国と居住国の間で起こる衝突や国際法との矛盾を避けることができると述べた。
李准教授は最後に、「海外同胞側が同法をどのように受け取り応じるのかについて考えなければならない」とし、「金正恩総書記は今年5月に総聯第25回全体大会の参加者に送った書簡において、『自主権と生存権、発展権を擁護・拡大するための闘争を常に基本として捉えるべき』だと指摘した。これらの権利は個人が持つ権利ではなく、主権国家との関係で海外同胞がどのような権利を主張していけるのかという問題だ。同法の制定により、海外同胞たちの権利闘争は民族差別に反対する次元から、朝鮮の海外公民として与えられる権利を行使する新たなステージへと転換した」と権利闘争の展望を明かした。
民族の一員として
建国大学校のチェ・ユンチョル教授は、南側の在外同胞政策について発表した。チェ教授は、在外同胞法が制定された1999年以降、南朝鮮に滞留する外国国籍の同胞数は23年間で7倍に増え、その中でも中国国籍の同胞が圧倒的な数を占めるとしながら、南朝鮮の憲法、国籍法など、在外同胞と関連した法制の変遷過程と現況に言及。特に、在外同胞法は、制定当初は在外同胞を「在外国民」と「外国国籍同胞」に区分し、1948年8月15日以前に海外に移住した同胞は事実上、在外同胞法の適用対象から除外されたとしながら、後に適用対象となったものの、在外同胞に対する区分に沿って待遇に差が生じたと説明した。
チェ教授は「南朝鮮社会が在外同胞を差別なく抱擁し、特定の地位と資格で区分するのではなく、同一の待遇を与えなければならない。また、南側での在外同胞法および政策はいまだ不十分であり、これらを担当する行政機関が複数あるため在外同胞の立場からすると複雑だ。立法者は在外同胞を民族の一員として受け入れ、在外同胞たちの法的地位と処遇に関連する法令を、統一性を保ちながら整備しなければならない」と課題を提示した。

南側の在外同胞政策について発表する建国大学校のチェ・ユンチョル教授
一方、第1部の最後に発表した立命館大学の金友子准教授は在日朝鮮人の国籍、法的地位について詳細に言及した。金准教授は1965年に締結された「韓日基本条約」を機に在日朝鮮人の法的地位は大きく変わり、「韓国」国籍だけに永住資格の申請権が認められたと説明した(91年に特別永住資格に一本化)。
金准教授は「1965年を境に国籍、特に特別永住資格問題をめぐってさまざまな議論がなされた。多くの在日朝鮮人にとって国籍問題は、在留資格を安定化させるためのものであって、国家への帰属意識を否定するわけではなかった」としながら「共同体として生きる在日朝鮮人が今後、本国とどのような関係を構築するのかを考えなければならない」と提言した。

立命館大学の金友子准教授
(安鈴姫、金盛國)