去る10月17日(火)、朝鮮文化研究室の主催による「朝大文学café第8回研究会・〈関東大震災100年、朝鮮人虐殺と文学〉」が、本学教員・学生16名の参加のもと行われました。
「朝鮮人虐殺と朝鮮人文学者」というタイトルで金真美さん(文学歴史学部准教授・朝鮮文化研究室副室長)が、「朝鮮人虐殺と日本語文学」というタイトルで李英哲さん(外国語学部教授・朝鮮文化研究室室長)が報告し、関東大震災朝鮮人虐殺について文学を通じて考える非常に有意義な場となりました。
 
 
 
① 金真美さんは、東京留学中に朝鮮人虐殺現場を目撃し体験した多くの朝鮮人文学者たちが厳しい検閲と監視のため執筆を断念するしかなかった状況であったことを確認し、そのなかでも、李箕永(1896-1984)の場合1924年から関東大震災の皮膚感覚の恐怖を幾度も執筆しようとしては挫折し、そしてついに1961年に発表された『豆満江』第3部・第7章「東京大地震」によってその執念を果たすこととなったと説明しました。とくに『豆満江』という大河小説は、植民地戦争で繰り返された虐殺行為、討伐経験という暴力行為が制度的な民族抹殺行為につながるという文脈で展開されている点が重要であると報告しました。
 
 
 
② 李英哲さんは、まず自然災害によって偶然的に起こったものではない「関東大虐殺」を日本近代文学者たちがどのように作品に残したのか、また現在も様々な文学ジャンルにおいて「関東大虐殺」は日本の政治社会状況を浮き彫りにする重要なテーマとして描かれているとし、関東大震災朝鮮人虐殺を素材としたいくつかの作品についての紹介がありました。一方、「不逞鮮人」という言葉が隔世遺伝のように今日も在日朝鮮人が被る暴力として反復されている状況について言及し、朝鮮人のトラウマ的心理と行動が1945年の「解放」をはさみその後もさまざまに変容しながらずっと反復しているという点が強調されました。
 
 
報告に続いて、ゲストコメントとして林裕哲さん(外国語学部准教授)より、冷戦下、東南アジアおよび南米諸国で続発した共産主義者大虐殺について書いた『ジャカルタ・メソッド』(2022)という書籍を紹介しながら、ジェノサイドを正当化する民族、階級、性差別の視点がいかに重要であるか、また現在においても左派への虐殺が問題視されない点を指摘しながら、我々自身も被害者たちの強力なナラティブをこれからも聞き逃してはならないと言及されました。
報告、コメントの後、質疑応答を交え参加者たちによる活発な議論が行われました。